プロシュート、ピアフ、そして赤ワイン

プロシュート、ピアフの曲、そして、赤ワイン。

− それらがあれば、もう何もいらなかった。 


札幌ススキノにあるワインバー、IWBロマネ。 

ワインバーといえば、お酒だけのイメージがあ

るけれど、そこでは本格的なフレンチやイタリ

アンを夜中1時過ぎまで楽しむことができた。 


26歳から自分の会社。 

仕事はいつも楽しかった。 

30代前半の仕事は、もっともダイナミックで、

ハードワークの連日だった。 


仕事が終わるといつも10時は回っていた。 

そんな仕事終わりの楽しみは、 

美味しいお酒と料理だった。


 

寿司や割烹なら遅くまで開いている店は、いくらでもあった。 

けれど、フレンチやイタリアンの専門店となると、もう閉まってしまう時間。 

だから、雪が降る中、タクシーを拾ってでも、わたしはススキノに向かった。


ススキノのビルの5階に、店はある。 


ドアを開け、ロートレックのリトグラフが飾ら

れている廊下を抜けると、賑わいのある明るい

フロアが目の前に広がる。


ワインを楽しむひとびとの楽しげな声が、ピア

フの歌声とともに聴こえてきて、疲れ冷え切っ

たわたしを、温め、高揚させてくれた。 


初めてロマネに行った時、いちばん最初に食べたのがプロシュートだった。 


豚の足が木の間にぶら下がり、

それをナイフで、こすこすと、切り落とす。

今となってはちょっとしたバルでもあるけど

当時それは、とても珍しかったんだ。 


プロシュートは前から大好きだった。

でも、ああいう風に切り出したばかりの

プロシュートは初めてだった。


それは大きな白い皿に盛られ、
わたしの前に運ばれてきた。

良質のオリーブオイルと、

パルミジャーノレッジャーノをかけて。 


驚愕! 


今までわたしがハムだと思っていたあれは、なんだったのだろう。 


店長が誇らしげに教えてくれた。 

“これは、先日わたしがフランスに行った時、カバンに隠して持って帰ってきたものです。”


関税が高かったのか、

検疫の規制が厳しかったのか、

よくは知らない。 

“密輸”しなければ手に入らないほどのもの、

それが、とにかく、プロシュートだったんだ。 



昨日は、仕事納め。 


今やプロシュートは手軽にスーパーで買えて、

ファミレスでさえも扱いがある。 


三人の子どもが騒ぎながらの夕食は、 

“ロマンチックさ”の“かけら”もない。 


夕食にはいつものテーブルワインと、

これまた代わり映えのしないマスの焼き魚。 


けれども不思議なことに、 

ツルヤ(近所のスーパー)で買ったプロシュー

トに、ちょっぴり贅沢なオリーブオイルをかけ

て食べると、気分が変わった。 


夫は、いつもにも増してカッコよく見え、 

夫の話は、聞いたことがないほど面白い。 


あれあれ、

ロマンチックさのかけらもなかったのに、

急にロマンチックになってきた。 


ピアフの音楽が、遠くから聞こえてきた。 



今日も人生の扉を開いて出会ってくださり、ありがとうございます。 

実際にかかっていた音楽は、子どもたちが踊るBGMの“PPAP”だったけど。  

Mika Nakano Official Blog

軽井沢から、ライフ・文化・自己実現・現実化・コーチング・ピープルビジネスのエッセイをお届けしています。

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