居場所がない

業績が上がらない。 

自分のせいだろうか? 


前の店舗からの移動を言い渡されたのは 

二ヶ月前だった。 


「むかしからある店舗なんだけど、

なかなか業績が上がらない店があるんだ。

君、この店舗、調子良く出来たから、

そこも、こんな風にして欲しいんだけど。」 


課長からそう言われて、 

少しばかり得意になっていた。 


配属されたその店舗は、 

店構えも前の店より古く、 

スタッフもベテランのパートさんが多い。

当然みんな、彼より年上だった。


20代半ば前で若くして店長になった彼は、 

その店では“新米”扱いだった。 

「うちの店ではオープンからこうですから。」 

「店長、それ違いますよ。」 

何かやろうとしても、 

自分は下に見られていると感じた。 

自分がいなくても店は回るとも思った。

彼には、居場所がなかった。


一方、この店の課題も見えて来た。

スタッフの作業はスムーズだけど、 

活気がない。 

業績も長いこと横ばいだ。

会社からの依頼は“店を変える”ということ。 

それがまったく出来ていない。 

焦りと、苛立ちの日々が続いた。 


ある時、 

彼は朝礼でそのことを話すことにした。 

「店の活気がないので、 

もう少し元気よくいってもらえませんか」 


すると・・・ 

何となく、空々しい雰囲気になった。 

「青二才が何を言っている」 

そんな声が聞こえる気がした。 

 

「店長」 


いちばん古いパートさんが声を上げた。 

マズい! 

生意気なことを言ったと思われた! 

心臓がドキドキした。

気づかぬうちに、下を向いてしまっていた。 


 「店長、少し自分の事を話してもらえませんか」 


思わぬ言葉に、意表をつかれた。 

顔を上げて、みんなを見た。 

みんな、自分を見ている。 


「店長のこと、良く知らないんです。」 


ビビっていたのは自分だった。 

前は学生バイトが多い店だったから、 

自分が上に立てると自然に思えた。 

ここでは、年齢もキャリアも上の人が多い。 

だから、こちらから関わるのが怖かった・・・


まず、自分のことを話そう。 

そして、ひとりひとりの話を聴いていこう。 


その日から、 古めかしかったその店が、 

少しずつ“新しく”なり、 

数ヶ月後には見違えるような店になった。 


今日も人生の扉を開いて出会ってくださり、ありがとうございます。 

老いも若きも、話せる・聴いてくれる、そんな場所に喜んで行くよね。 



Mika Nakano Official Blog

軽井沢から、ライフ・文化・自己実現・現実化・コーチング・ピープルビジネスのエッセイをお届けしています。

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