Clair de Lune (月の光)

夜中に目が覚めた。 

なんとなく、 

このままベッドに横たわっているのは、 

ふさわしくない気がした。 


南向きで三階まで全面窓のリビングへ向かい、

ガラス越しに夜空を見上げる。 


満月にほど近い月が、 

初冬の空高く浮かんでいた。 


白く、 

明るく、 

美しい光を放つ月が、 

闇の中に浮かぶ様は 

どうしてこうもロマンチックなのだろう。 


目を落とすと、 

あらゆるものがうすぼんやりと見えている。 


樹齢300年はあろうと思われる庭の山桜。 

大人ふたりが手をつないでも届かないほど 

太い幹を持つその大木の影が、 

薄明るく照らされている地面に落ちている。 


まるで、 

計算し尽くされた舞台照明か、 

映画のセットのようだ。

完璧すぎる。 


ドビュッシーの“月の光”が聴きたくなった。

iPhoneのマイミュージックのアプリを開き、

Clair de luneと検索する。 


本当は何枚もあるレコードアルバムから 

気分に合ったものを選んで、 

優雅にプレイヤーに置き、 

静かにそっと針を落として、 

“空白の音”も含めて耳を傾ける、 

−−−それがいいに決まっている。 


けれど、今や時代はデジタル。 

人間も瞬時に対応可能になってきたようだ。 

私たちの優秀な神経システムそのものが、 

そのように訓練されてきているに違いない。 

iPhoneの音楽とわたしは、 すぐに同化した。 


人生の中で、 

本当に美しいものを見て感動する瞬間は 

いったい何回あるのだろう? 


クリスピーなグランドキャニオンの朝日、 

緩やかでスローなマウイの夕陽、 

朝もやの中の猛々しいピレネーの山々、 

アマルフィの甘美で吸込まれそうな紺碧の海、 

ヨーロッパの巡礼路、カミーノ・デ・サンティ

アーゴのオ・セブレイロの満天の星空・・・。


けれども今、 

私が感動しているのは、 

自宅の窓越しに眺める月と月光、 

それに照らされた自然のままの庭だ。 


だとすると、と、ふと思う。 


もしかしたら、 

私の人生はそう間違っていないかもしれない。 


今日も人生の扉を開いて出会ってくださり、ありがとうございます。 

美しい風景、美しい音。外にも内にも、それがあればサイコーだね。 

Mika Nakano Official Blog

軽井沢から、ライフ・文化・自己実現・現実化・コーチング・ピープルビジネスのエッセイをお届けしています。

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