ピープルビジネスと父子(おやこ)


彼の母は、彼が中学生の時に出て行った。 

父親が、仕事と家事の両方をしながら、 

彼と妹を高校卒業まで育てた。 


父親が作った弁当は、 

他の子の持って来る母親達の弁当とは違った。 

それは、白米に梅干しを入れただけの 

“日の丸弁当”だった。 


2時間目が終わると、 

育ち盛りの彼のおなかはもう鳴っていた。 

それでも、けして弁当箱を開けなかった。 

昼まで我慢したのではない。 


 「あの弁当が恥ずかしくて仕方なかった。」 


父親が作ってくれた弁当を、 

彼は毎日トイレで流してから帰った。 

それを、高校3年間、ずっと続けた。 


彼は言葉にしなかったけれど、 

本当は、申し訳ないと思っていたのだろう。 

それ以上望むことも出来ないと思ったのだろう。

 だから、弁当は毎日、空にして帰ったんだ。


高校生からそのチェーン店でバイトをし、 

高校卒業と同時にそのまま就職をした。 

父親にそれ以上負担はかけたくなかったし、 

自分も父親の世話にはなりたくなかった。


ある時彼は、
店舗を統括する営業課長から、

本部の部長に抜擢された。

営業社員がもっとも嫌う“管理部”だった。 


”やらされ感”がモチベーションを低下させる。 

強制されたことに熱意を持つ人はいない。 


高校から現場にいる彼は、 

現場とズレがある本部のトップダウンの命令で、 

現場のやる気が枯渇するのを、良く知っていた。 


そこで彼は研修で習ったことを、 

とにかく必死ですることにした。 


改善が必要な店舗の責任者、 

ひとりひとりと、会った。 

彼らを責めたり、

一方的な注意はせず、 

良く言い分を聴いた。

 そして、本当はどうしたいのかを聞いた。 


中途採用が多い本部エリート達からの 

彼に対する評価が高くなりだした。 

店舗管理の数値とレートが上がったのだ。 


数百ある店舗を“ルール”で統制は出来ない。 

でも、ひとつの店には、ひとりの店長がいる。 


1人の店長とつながれば、 

100人の従業員とつながれる。 

100人の従業員がつながったら、 

10000人の消費者とつながれる。 

だから管理だけでなく、利益も上がった。


「オヤジに、会いに行こうと思います。」 


高校を卒業して以来、 

ほとんど帰ったことがない実家に帰ると言う。 


 「やっと、オヤジの話も聴けるかなって思って。」 


ピープル(ひと)ビジネスというのは、 

ピープルを使ってするビジネスではなく、 

ピープルがビジネスを使って幸せになることで

成り立つビジネスモデル、のことだと思っている。


息子のために”日の丸弁当”を作る父親の姿が、 

ビジネスという場面の向こう側で

 “昇華”するのを、見た気がした。 


 今日も人生の扉を開いて出会ってくださり、ありがとうございます。

 ビジネスとパーソナルな幸せは、非常に密接につながっていますよ。  

Mika Nakano Official Blog

軽井沢から、ライフ・文化・自己実現・現実化・コーチング・ピープルビジネスのエッセイをお届けしています。

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